幼馴染は、今日でおしまいです。
幼馴染は、今日でおしまいです。
まず、私の幼馴染である渋谷有利。
正義感が強く、優しくて野球大好きな男の子。
野球をしている姿の有利をみて、私は思わず声に出してしまう。マネージャーとしての声援も兼ねて。
「がんばって有利!!!」
手を振って、彼はにっこりと私のことを見て微笑んだ。
あぁ、その微笑みが凄く好きなんだとまた気付かされた。
村田に呼ばれまたマネージャー業に取り掛かる。
ドリンクを作って、いつでもタオルを渡す準備をしたりするのが仕事だ。
基本的には村田が居るので、重い荷物は助かって貰っている。
「または、渋谷みていたんだろ?」
「…そうだよ」
村田にはバレている。いつからバレていたのかは言わないけどきっと中学の時からバレてるだろうなって思う。
「ありゃ、素直だね。珍しい」
「おーい!!、村田!!スポドリ頂戴!」
有利が走ってやってくる。泥まみれになっていた。
「はい、ドリンクの前に…タオルで拭いてあげるよ」
ソッとタオルを出して顔の泥を落としていく。有利は、恥ずかしそうにしながらこちらを見つめている。
有利には、言いたいことがあるのだがなかなか言えずにいる。
不思議そうなと、渋谷をみてニヤニヤしている村田。
村田は、有利の言いたいことがわかる。有利がわかりやすいというのもあるのだが本人たちは知らない。
「スポドリは?」
「あ、飲む……。
あのな、」
「うん?」
「野球…終わったらまってて欲しい」
「いいよ、待ってるね。有利」
即答する彼女に、有利はよっしとガッツポーズをしている。
そんな彼女は、何故だろうとは思ったが敢えて聞かないことにした。
有利は、の横顔をじっと見つめる。
彼女は、幼馴染であり、指輪をあげたことのある相手。黒髪で太ももまである長いストレートの髪は男子高校にとってはドキドキしてしまう。魅力的な女の子だ。
スポドリを飲んだ有利は、の頭に手を乗せ優しく撫でた。
「ありがとうな」
「どういたしまして」
クスクスと笑う有利もも楽しそうにしながら自分のやることをやるため離れていく。
二人とも顔だけは赤くなりながら。
「(有利に、頭撫でられた…)」
そう思うと恥ずかしさで、どこへでも行ってしまえそうな気分になる。
恥ずかしい話、毎回されて嬉しくなってしまうのだ。
好きな相手は特別だと思う。
有利はどうなんだろうか、私のこと好きなのだろうか。有利は、私を女の子とは扱うけど好きかどうかはわからない。幼馴染だからと言われる事が多かったから脈ないのかなとも思ったり。
一緒にお風呂入ってみたり、一緒に寝てみたりはあった。
でも、実際どうだろうか恥ずかしいのはお互いあるだろうけどそれ以上の気持ちになっているのかな。
有利の気持ちを知りたい。
そして私の気持ちも伝えたい。
草野球が終わり撤収の作業を、村田やメンバーたちとする。
慌ただしくもあり、大変な時間だけど村田が気をきかせてくれて荷物を先に運んでくれた。
先に行ってると言われてわかったといい、有利と私だけはグランドに残る。
「お疲れ様、有利」
「こそ、お疲れ様だよ。重たい荷物とかごめんな」
「いいの、私は有利の野球やってる姿好きだから」
笑顔でそういう彼女は、夕日に染まってとても綺麗であった。
「…あのな…、…幼馴染って関係やめない?」
キョトンとして、こちらをみてくる彼女にあぁ、この言い方じゃわからないよなぁって苦笑いする。
「…、おれの彼女になってください。…好きなんだ。ずっと好きだったから…女性として」
一瞬何を言われたのかと思ってキョトンとしていたが理解して顔を赤くした後涙を流している。
「…私も…、私も有利が好き!彼女にしてください!」
ぎゅぅと抱きつく彼女を、脇を抱えて抱き上げて抱きつく。
「…指輪持っててくれてありがとうな。凄く嬉しい」
「有利がくれたから…ずっと付けてるよ。愛してる」
チラリと見える指輪をネックレスにしているチェーンが見える。
こんなにも大事にしてくれていたんだな。
「おれも、を愛してる…!幼馴染は今日でお終い、今日から恋人同士だ!」
「…っ!!有利…ありがとう!!」
その後、村田やメンバーにそのことを伝えると“やっと付き合ったんだな”と祝福?と言い難い言葉をもらったが、凄く有り難かった。
眞魔国のみんなにも言わなきゃという反面ヴォルフラムのことがある。
とヴォルフラムが喧嘩しないといいんだけどな…。
でも、その時はが好きだって伝えられる。
彼女だって。
ずっと幼馴染だった壁をやっと乗り越えた。